あの人は、毎朝ここにお越しになられます。
丁度、わたくしの目の前のホーム。
それこそ話しかけたりはできませんが、わたくしはあの人が好きなのです。

あの人はいつも、お友達と一緒にこの駅へ来られます。
ある時、あの人がわたくしを見て言いました。
「綺麗だよね」
今でもあの時の、踊りたくなるような嬉しさは覚えております。間違いない、わたくしはこの身できちんと聞いたのです。

また、ある日には、わたくしのお洋服を褒めてくれました。
わたくしはいつも薄むらさきのお洋服を着用します。
そのお洋服を、「一番あの色が好きだ」と褒めて下さいました。
いつも、友達に「何だか貧乏臭いわ」と言われていたので、余計に嬉しかったのです。

わたくしは、あの人ともっとお近付きになりたいと思いました。
ですが、目の前には大きな金網が立ちはだかっています。
それに、わたくしは動けないのです。

わたくしの名前、それは「あじさい」。
露が、わたくしの花びらから一粒こぼれました。
「こんなものよ」
隣の子が言いました。
あの人は、金網越しに今日も笑っています。

風がひと吹きしました。
わたくしはしばらく風に揺れていました。






この頃使っていたケータイは一回につき1000文字(実質500文字)
しかメールが送れなかったので、とにかくそれ以内にとどめようと
思って書いた(打った)作品です。

06/02/27




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