サンスウ


夏休みをエンジョイ中・・・のはずが、いつのまにかもう31日。お母さんにもこっぴどくしかられるし、最悪だ。
今は、仕方がないから宿題をしている。
無意味な数字が並んだ本をじーっと眺めていても、何の面白みもなくて眠くなってしまう。ベンキョウはつまらない、とりわけサンスウは退屈だ。

何ヶ月か前、ぼくは先生にこうたずねたことがあった。
「先生、なんでこんな勉強をするの?将来、役に立つわけでもあるまいし」
先生はあきれたため息をついて、ぼくに視線をよせた。いすに座っていたぼくの目線からは、先生はとても大きく、妙な威圧感がある。
「じゃあな、先崎は将来、何になりたいんだ?」
「ぼくは、サッカー選手になりたいです」
先生は勝ち誇ったようにふふん、と笑うと目を光らせた。
「サッカー選手になるのには難しいんだぞ、わかるか?」
「わかってます。でも、なります。練習もしてるし」
「あのなぁ、おまえ、努力じゃどうにもならないことってあるんだぞー。もちろん、将来の夢を持つことというのは重要だ。しかし」
「しかし?」
「なれる保証は、まったくない。」
クラスのみんなのため息が聞こえる。そんなのわかりきったことだよなー。あ、俺、しょーらい安全に暮らすために公務員になるんだ。

公務員。そういえばお母さんもそんなことを言っていた。
「今の時代、やっぱり公務員になるのが一番かしらね」
公務員という仕事がどういうものかさっぱりわからなくて、辞書で引いてみた。辞書には、
「国または地方公共団体の職務を担当し、国民全体に奉仕する者。国家公務員と地方公務員とがある。」
と書いてあった。
国民全体に奉仕する者。
奉仕という言葉の意味がわからなくて、お母さんに尋ねてみた。
「ねえ、奉仕って何?」
「まあ、この場合一生懸命働くって意味、かな?」
「ふうん」
じゃあ、公務員は国のために一生懸命働くのか。
国のために働くって面白いかな?ぼくはいやだな、つまんないや。
それに、国のために働くって言っても、お父さんがよく
「本当に今は不景気で」
って言ってるし。

そんなことをぼーっと考えていると、お母さんの雷が飛んでくる。
ぼくは慌ててサンスウのテキストを引き寄せた。
こんなの、答えがあるんだから、ひっそりと答えを見ながらやればいいんだ。

ぼくはいつか、サッカー選手になって世界を飛び回る。世界からのスカウトが殺到して、大忙しだ。
女の子にモテて、ファンレターも一日にダンボール10箱くらい。
それを見て、ぼくは
「こまっちゃうなー」
って苦笑いをする。
テレビをつければぼくの特集がやっていて、雑誌をめくればぼくの写真。
ついにはぼくのゲームが発売して、それも大ヒット。
そのうちに会社を設立して、サッカーのグッズを作ったり、ドラクエに負けないゲームを開発して売りまくるんだ。
ぼくは億万長者になって、いつかお父さんが言ってた「長者番付」のいちばんになる。
としがきたら、ぼくは引退してタレント活動をする。
ぼくの生写真は一枚一万円で売れるし、CDも発売。スマップなんて怖くない。CMにもドラマにも、笑っていいともにも出ちゃったりなんかして、しまいにはハリウッドデビュー。
アカデミー賞なんかとっちゃったりして、ぼくは大スターだ。
同窓会では、あのまこちゃんがぼくに熱烈な視線を投げかけたりして。
でも、ぼくは、いたってクールだ。みんなの女の子に平等にやさしくするんだ。だって、ぼくは大スターだから。

耳を誰かがたたく。
・・・違う、これは声だ。大きい声が、ぼくのみみの中をこだまする。
なんだろう、誰の声?
「浩二、おきなさい」
「あれ?お母さん」
「もう七時よ、どうするつもり」
そういえば、ドラえもんの声がする。のび太がドラえもーん、助けてーって叫んでいる。ぼくは、すぐにドラえもんを頼るのび太が嫌いだ。
「さっさと宿題を済ませなさい」
そうだ、ぼくは寝てしまったんだ。
まだこんなにたくさんの宿題があまっているのに。

とりあえず、答えを見ながらサンスウの宿題を終わらせてしまおう。
ぼくは、さっき見たうきうきするような夢を思い出しながら、サンスウの宿題に取り掛かった。







文章を書く上で、意味を求めすぎているような気がしたので
あまりそういうことを考えないようにして書いた作品です。
それにしても、幼稚な小学五年生だ・・・
二年前位に製作。

06/02/27





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